2012年5月7日月曜日

ユウダイスキ


日本が海外に誇れる文化の1つ、アニメ。その制作環境の問題解決に取り組み、アニメをもっと振興すべく、文化庁が若手アニメーターを支援するプロジェクトを2011年度にスタートしました。今年度もその第2弾「アニメミライ」が劇場公開されましたが、いったいこの事業はどんな目的で行われているのか、どういったことが行われているのか、実際にプロダクトマネージャーとして動いている桶田大介さんが、「マチ★アソビ vol.8」でトークショーを行いました。

アニメミライ[ animemirai ]

イベント開始と同時に「よっぴー!」の歓声が上がり、司会進行を務めるニッポン放送の吉田尚記アナウンサーが登場。

吉田尚記(以下、吉田):

朝10時からこれだけの人が集まるなんてすごいなぁ……どうも、突然お邪魔します。ここから司会進行をさせていただく、ニッポン放送アナウンサーで1人のアニメファン、吉田尚記です。マチ★アソビには前回、ニュータイプアワードの司会として呼んでいただいて、このあたりをうろうろしたりしていたんですが、世の中のアニメイベントって殺伐としてるじゃないですか(笑) 戦いなのはわかるけれど、そんなに戦わなくてもっていうぐらい。でもこのマチ★アソビの平和な雰囲気、ホントにいいですよね。

声優さんなどがゲストで来るわけではないステージで、熱い陽射しの中多くの人が来場しました。

僕は今回もどうにかここに来られないかということでこの「アニメミライ」の司会をさせていただくことになりました。ニッポン放送は関東のラジオ局なので知らない方もいるかもしれませんが、電波を私物化しているアナウンサーです。ちなみに、僕のことをご存じない方はどれぐらいいらっしゃいますか?あ、結構いらっしゃるんですね。それなのに集まっていただいて、本当にありがとう!コミケにここ6年ぐらい個人サークルで参加していて、高校生のころ、コミケがまだ晴海でやっていたころから参加しているような人間です。

今日何をするかというと「アニメミライ」についてお話をしていくわけですが、正直、アニメミライって何なのかわかっていないという方は……(会場半分挙手)半分ぐらいかな。すでにDVDを買 って頂いた方もいらっしゃるようですが、実はアニメミライって文化庁がアニメを作っているというものなんです。それでは、一緒に話をする方をお呼びしたいと思います。まずはアニメミライのプロダクトマネージャーを務めている弁護士の桶田大介さん。

桶田大介(以下、桶田):

おはようございます、今ご紹介頂きました、アニメミライというプロジェクトのプロダクトマネージャーを務めさせて頂いています桶田と申します。今日はわかりやすくお話をさせていただきたいと思っていますので、よろしくお願いします。

吉田:

アニメイベントで弁護士がしゃべるって、あんまりないよね。

桶田:

しかも同級生でね。

吉田:

実は僕の高校の同級生なんです、去年の秋に1 8年ぶりぐらいに会ったんですよ。かつてはお互いに天地無用!魎皇鬼とかを見ていて。

桶田:

ビデオを貸し借りしたりして。

吉田:

そういう仲だったんですが、再会してアニメ関係の人の話をすると「俺もその人知ってる」ばっかりで、ちょっと待てよ何者だ?と思ったら、この人、アニメミライの面倒を見ていたわけです。それはすごいということで、僕がアニメミライの広報みたいなことをちょこちょこやらせてもらっています。

続いて、アニメミライはアニメ作品を作るプロジェクトなので、作ったら見てもらわなければいけない。そこを担当しているのがアニマックスの佐藤さんです。

アニマックス 佐藤功(以下、佐藤):

こんにちは、アニマックスの佐藤です。ケーブルテレビ徳島で放送していますので地元の方、よろしくお願いします。

吉田アナ、佐藤さん、桶田さん。

吉田:

僕と契約して会員になってよ、ということですね。

佐藤:

魔法少女まどか☆マギカ」も絶賛放送中です。

吉田:

よろしくお願いします。

ここまでがアニメミライに関係する人たちなんですが、ここからは今の段階では関係がないんですが聞き手として参加して頂く、でもあの作品のプロデューサーだったりもします。アニプレックスの岩上さんです。

アニプレックス 岩上敦宏(以下、岩上):

こんにちは、アニプレックスの岩上です。吉田さんもさっき言っていましたが、アニメミライのことはよく知らないままに、桶田さんと知り合って「今日、出てよ」と言われて出ています。バラエティ番組のひな壇のような感じだと思います。

吉田:

なるほど、僕の頭の中ではキュゥべえなんだなと変換されましたが、そういうことですね。あれ……順番からすると俺がマミさんぐらい?イベント終わった後にマミられちゃったら大変だな……。

ということで、まずはアニメミライってなんなのよ?というところから、プロダクトマネージャーの桶田さんにお話しして頂きたいと思います。

桶田:

アニメミライには大きく目的が2つあります。1つはアニメーターを中心とし た制作の若手を育てたいということ。もう1つは制作会社の振興です。オリジナルアニメーションが最近は人気を集めていますが、やはり企画が通りづらいということで、オリジナル企画を作る機会を確保して、作品の権利も昔みたいに制作会社が全てを持つとどうかなということで、業界振興のためにやっています。

吉田:

業界のことなので岩上さんにお聞きしたいんですが、アニメの仕事って大変ですよね。

岩上:

そうですね。

吉田:

特に儲けのためだけにやっている人は少ないと思いますが、アニメを使って儲けるというのは大変ですか?

岩上:

当たり前のことですが、深夜アニメは今沢山ありますけれど、放送の時点では収入にならないわけです。ビデオパッケージを発 売してその結果がどうかという世界なので。僕らも、アニメーターの若い人たちがこれから仕事をしていくという点で課題があると思っていたので、考えてもらえることは嬉しいですね。

吉田:

あえてズバッと聞いてしまうんですが、アニメって何%ぐらい儲かっているんですか?さすがに深夜ではないところで放送しているサザエさんとかは大丈夫だと思うんですが。

(会場笑)

岩上:

だいたい皆さん察しがついていると思うんですが、半分はないです。

吉田:


平野が位置までdessectedされている場所

けっこう厳しい世界ですね。プロデューサーの方々からすると、いかに儲かっている側へ持っていくかというのが重要な。

岩上:

そうですね、エンタメ全体がそういうものではあるんですが、工業製品とは違うので、きっちり作ってきっちり全部当てますと、そういう話ではないので、当たったり外れたりはあると思います。なので、若手のアニメーターさんにも十分なお給料を払えればいいんですが、そこはビジネスとして難しいというジレンマもあったりして、そこにカンフル剤があるというのは大事なことかなと。

吉田:

アニメというのは製作委員会でお金を持ち寄って作るケースが多いんですが、今回のアニメミライでは 文化庁がお金を出して作るわけです。

桶田:

すべて文化庁が出しています。

吉田:

1年間でどれぐらい出しているんですか?

桶田:

2億円ちょっと出てます。1年間で4本なので、1本あたりでいうと予算は3800万円となっています。

吉田:

岩上さん、この数字を聞いていかがですか?

岩上:

どうでしょう(苦笑)、「ありがとうございます」と(笑)

(会場笑)

けっこうしっかりしたものを作れる予算だと思います。

桶田:

アニメ1本で1000万円とか2000万円弱とか、そういう数字を聞いたことがある方もいるかと思いますが、それは13とか26とかで割っているんですね。プリプロダクションと呼ばれる、曲を作ったり、作品世界を作ったり、原型のプロットを作ったり、そういった前工程に手間と費用がかかっているんです。この点は13話あっても1話だけでも変わらないので、見かけほどはおいしくないんです。

吉田:

大変なことをして作るわけですが、商売としては儲けないといけない。次に仕事を担ってくれる次世代を作りたいとき、教育は将来返ってくるかもしれないけれど、その瞬間には返ってきません。このあたり、制作現場で若手の方々は 国内にいるものですか?みんな国外に出してしまっているんですか?

岩上:

国内にも才能のある人はいっぱいいます。アニメーターに成り立てで動画マンをやっているという人だと月給もあまりもらえないかもしれませんが、そんな中からうまい人がどんどん頭角を現してきてスタークリエイターになっていきますから、才能は溢れていると思います。

吉田:

なるほど、才能は溢れていると。報告書で目にしたんですが桶田さん、いま動画を国内でやってるパーセンテージって結構低いですよね。

桶田:

全体的なきちんとした調査はなくて感覚でしかわからないですが、8割ぐらいの動画・仕上げは海外に出ているのではないかといわれています。ただ、正確な数字は不明です。

岩上:

国内でも動画は海外に頼っているというケースはありますけれど、例えばユーフォーテーブルではアニメ文庫作品では、ほとんどを国内でやったと近藤さんは話していました。実は、アニメ文庫というのは、ユーフォーテーブルの若い力で新しいものをやってみようという、僕と近藤さんの中でのミニ「アニメミライ」みたいな企画なんです。

吉田:

そういった形で作品が作られて、できあがったものはアニマックスさんで放送したわけですが、佐藤さん。

佐藤:

今年3月に最初の放送を行いましたが、見られた方はいらっしゃいますか?

吉田:

ちらほらいらっしゃいますね。DVDや劇場でも見たという方は……おお、4割ぐらいいらっしゃいますね。

マチ★アソビの「アニメミラ イ」ブースでは作品DVDが販売されており、お客さんの中にはこれを持ってきている人がいました。

佐藤:

3月にアニマックス全国波で放送して、そのあとMBSさんとよみうりテレビさんという関西準キー局2局がアニメミライ作品を2本ずつバラバラに放送するという画期的な形態を取らせて頂いて。いろいろな方々が垣根を越えて協力をし、それが世の中に出ていくことで、アニメーターさんのモチベーションに繋がればと思っています。

吉田:

広報という面では昨年、僕が桶田からいろいろな人に見てもらいたいので、有名人でアニメ好きの人に応援してもらえないかという話をもらいまして、ストレートに「西川貴教さんにお願いできないか」という話になりました。僕が直接連絡先を知っているので電話すると、その一言目で西川さんから「アニメの現場は大変だと聞いている。常々、そのためにでき� �ことがあれば、何かしたいと思っていた」と言って頂いて。

桶田:

夜中2時ぐらいに連絡してもらって。

吉田:

そして広報大使を引き受けてもらいました。あれだけの立場の人で、ほぼノーギャラでやってる人なんていないと思いますよ(笑)

佐藤さんにしても岩上さんにしても桶田さんにしても、みんなアニメは見ていると楽しいけれど、現場はこのままだとちょっとやばいよねという気持ちはあるわけですよね。

岩上:

大塚明夫さんの講演でも「声優になるのは難しい」、大塚さんは端的に「オススメしないよ」とお話されていましたが、エンタメ業界は入った全員が成功する場所ではなくて、それは絵描きさんも同じだと思います。ある程度厳しい環境からスタートして、実力で勝ち� �いてきた人がいま一線級で監督をやっていますから、厳しいところがあるのは事実です。そんな中でも、少しでもシステム的な部分など、良くできる部分はあるのでは無いかと思っています。

吉田:

よくしていくというのをいかにうまくやるかというところで、若手の育成と、オリジナル作品を作る、という2つの柱がありました。若手の育成は細かいところもあるので時間があればお話ししたいと思いますが、オリジナル作品を作るというのも大きなポイントですよね。ここで聞いている方の中に将来プロデューサーになるという人もいるかもしれませんが、これって画期的なことをやっているわけですよね。

桶田:

オリジナル作品というのはマンガなどのアニメ化と違ってパイが読めません。リスクが高� �。

吉田:

アニメミライの場合は前提として、マンガ原作やラノベ原作はないんですね。

桶田:

はい、アニメミライではマンガやライトノベル原作の作品はやめてくださいとお願いしています。そういった作品はみなさんが本業でやられているので、そこに公的なものを突っ込むのは筋が違うのではないかということです。

岩上:

古典小説であればOKなんですか?

桶田:


"子供の肥満レポート"

昨年の作品の1本である「おぢいさんのランプ」は新美南吉さんの作品です。新美南吉さんの生誕100年が近いということで、そちらの記念イベントでも使われるとのことです。そういうのはOKです。

吉田:

別に文化庁が特定のラノベをアウトだと言っているわけではなく、オリジナル作品を作ることが重要なわけですね。やはりオリジナルは作るのは大変ですか?

岩上:

大変です。それこそまどか☆マギカみたいに楽しんでもらえて大成功する例もありますが、失敗する比率の方が高い世界です。ヱヴァンゲリヲン、ガンダムのようにヒットしたタイトルだけが残って可能性が取りざたされますが、既存ファンがいないというのはけっこうなギャン ブルです。

吉田:

アニメミライで作った作品をアニマックスに持ち込んでシリーズ化したい……というのはOKなんですか?

佐藤:

ぜひそこまで行ってもらいたいなと思っています。今年の4作品を見てもらうと分かるんですが、今の商業ベースで作っているアニメではできない作風も出せているので、テレビアニメだけではなく劇場などに発展していくものも期待したいと思っています。

吉田:

お役所仕切りだと「もうここでおしまい」というのがありそうですが、大丈夫なんでしょうか。

桶田:

普通はそうで、実写映画でも似たような取り組みをやっていて、そちらは文化庁が全て著作権を持っています。アニメミライではメディア芸術総合センターという、かつて麻生さんがアニメやマンガの殿堂を作ろうとしていたアレですが、そこがやっていて、中の仕切りはすべて取っ払われているので、著作権に関しては終わった瞬間に制作会社にすべて渡し切りです。あとの利用は事後報告さえ年1回もらえれば自由ですし、続編を作ってもらうことも問題ありません。「煮るなり焼くなり好きにして」ということです。

(会場笑)

吉田:

たとえばここに「ぷかぷかジュジュ 」ってありますが、「ぷかぷかジュジュ ゼロ」を作ってもOKですか?

桶田:

ゼロでも、STARSでも、stay nightでもOKです。

吉田:

この形ってアニメ業界からすると画期的ですか?

岩上:

画期的だと思います。若手中心で作るということも、オリジナルを作るということも、商売を考えるとなかなか踏み出しづらいところがあるので、ありがたいし、新しいんじゃないでしょうか。

吉田:

これで「しらんぷり」グッズを作ってもいいわけですよね。グッズを作って報告したら文化庁が「じゃあ半分よこしなさい」ということもなく。

桶田:

こちらとしては先ほどの2つの目的が達されればいいんです。極端な話、応募時点でオリジナルの未発表作品ならOKなので、たとえば来年1月や4月に放送予定の新番組のオリジナルアニメがあったとして、ここに応募して、前日譚や番外編を作る ということでもOKなわけです。

吉田:

え、いいんだ!?来年4月放送だとまさに企画は今が山場だったりするわけですが、そこでパイロットフィルムを作りたいというときに、アニメミライに応募してもらう手もあると。

岩上:

応募規定はあるわけですよね?

桶田:

中身というよりも作り方ですね。若手、20代のアニメーターさんが5人以上で、ベテランさんは3人未満。指導役を置いて、その人たちは同じ時期に同じ作業場で仕事をして、掛け持ちしないでね、という感じです。

吉田:

たとえば、シリーズものの1話は普通の仕切りで作るとして、シリーズだとチーム制になりますが、前日譚的な「ゼロ」についてアニメミライのレギュレーションで制作して若手の底上げをして、そこ からシリーズに突入するというのもアリなわけだ。

桶田:

通常の制作スタイルでも各話ごとにラインがたちますから、アニメミライのレギュレーションにあったチーム編成をしてもらえば問題はないです。

岩上:

レギュレーションの中でいけるならいい話ですね。桶田さんにちょっと相談したいなと思います(笑)

吉田:

ちなみに応募はいつまでですか?

桶田:

今年は5月16日が締切ですね。

吉田:

いくら何でもあと10日で企画は立ち上げられないでしょ(笑) どういった資料が必要なの?

桶田:

応募書類そのものはこういったものの中では簡単で、キャラデザの基本となる立ち絵が1〜2枚あればOKです。見たいのはキャラクターの中身ではなく、動かすのに向いたキャラクターかどうかという点です。フリフリの衣装を着ていたりドリルがついていたりするのではなく、普通のショートヘアだね、とか。あとはプロット程度の脚本、そして監督とプロデューサーの名前が決まっていること。一番ハードルが高いのは予告編に相当する1分の絵コンテを作ってくれという点ですかね。

桶田:

ただ、動いている企画や眠っている企画でもそれに類するものはあるはずなんです。最初に考えたときに、こんなのめんどくさくてわざわざ1から応募してくれるのは少ないだろうから、どこにでもお蔵入り企画はあるはずなので、それを応募してもらえる形にしておこうということで作ってあるんです。

吉田:

子どものころから「お上」が作ったアニメってちょいちょい見てますよね。そういうのを見ているから、教育的な中身でなければいけないのかなというイメージがあるんですが、実際にはこれらの作品の中には「このロリコン!」というセリフが出てきたりします。それを見たときに、そこまでやっていいんだという驚きがありました。

例えば、魔法少女まどか☆マギカは、NHKのEテレ� �再放送された「日常」みたいにはいかないだろうという作品なわけですが、たとえばまどマギの第1話が持ち込まれたら、アニメミライとしてはOKなんですか?

桶田:

文化庁的にいうと、今年2月の文化庁メディア芸術祭でまどマギはアニメーション大賞を受賞しておられるので。

吉田:

なるほど、まったく問題ないと。

桶田:

文化庁の担当者にいわせれば、「我々はこれまで映画の振興をやってきた。映画の振興ではピンク映画も支援している。アニメーションに何ほどのことがあろうか」と。「内容には一切関知しない」ということです。

吉田:

マジで?そうなの!?

吉田アナと同じようにちょっとざわっとする会場。

桶田:

エログロとか公序良俗に反するのはさすがに許してね、ということだと思いますが。

吉田:


インディアナ州で行うには何がありますか? ?

文化庁としてはそれぐらいならOK、テレビで流れるようなアニメならNGはないと。……クイーンズブレイドのDVD版とかどう?

岩上:

文化庁メディア芸術祭の審査員推薦では「パンティ&ストッキングwithガーターベルト」が入ってましたよ。

吉田:

そうか、パンストはいいんだ。……こんな話をしてますけれど、あの人は弁護士ですからね。

(会場笑)

それぐらいレギュレーションが広いから応募作品が集まると嬉しいですね。「お上くささ」みたいなものは僕らが考えなくてもいいんですね。

桶田:

お上っぽいものに振るなら取り組む意味がないというのが文化庁の方々の考え方です。今のアニメーションの在り方が素晴らしいから、それを守りたいねという話なので。

吉田:

では、もっとはじけてしまっても構わないと。僕は正直、1年目はこの企画のことを知らなかったんですが、実際に作品を見てみて面白かったんです。いわゆる「ぬるぬる動くアニメ」を4本見られるわけですよ。これは佐藤さん、ご覧になってま� �よね、どうでした?

佐藤:

第1回の、アニメミライの前身である「PROJECT-A」、こちらも1話完結ですがチャレンジングな内容で、わりとアクションで知られているProduction I.Gさんがアットホームな作品を作ったり、意外性が面白かったですね。

昨年の若手アニメーター育成プロジェクト「PROJECT-A」。

吉田:

放送するという点では、アニマックスさんは視聴料を頂いている放送局なので、ある程度以上のものは流さなければという責任がありますよね。

佐藤:

アニマックスはアニメ専門チャンネルですので、今後良質な作品を放送していく上で、若手アニメーターを育成するということは大事だと考えています。ビジネスとして作品を成功させるという観点に立つと、若者に新しい試みを実験する場が減ってしまう。その点で、アニメミライを通じて人が出てきて、その方にスゴイ作品を作ってもらってスタークリエイターになってもらって、その作品をアニマックスで放送して……といういい流れを作りたいと思っています。

吉田:

ここにはキュゥべえが多いですね

(会場笑)

アニ� ��業界の長期的展望に立つと、誰かがやらなければいけないことを、即効性が求められるメーカーさんや放送局ではなく、文化庁のような公のところがやってくれると大変ありがたい。はっきりいって、僕はこの仕事で文化庁を見直しました。

岩上:

文化庁のような存在でなければできないことですよね。まどか☆マギカでメディア芸術祭の大賞をもらったことを新房監督とともにすごく喜びました。アートフィルム系の作品とまどか☆マギカとを同じ天秤に乗せて考えるというのはすごく難しいことだと思うんですが、改めて作品を評価してもらったことは僕らの力になったし、これから劇場版もあるので頑張ろうという気持ちになって、嬉しかったです。

吉田:

さっき時間があれば話したいと言っていた� �とについて少し時間があるのでやりたいと思います。オリジナル作品についてはこれだけの広さがある、文化庁にはこれだけの懐の深さがあるという話でした。もう1つ、アニメーターの育成について、僕なんかは見ているだけの人なので何が育成になるのか分からないんですが、アニメーターへのなり方とかもわからないと思うし、なっても生活が成り立つかどうかわからなかったりします。具体的には、どのようなことをやっているんですか?

桶田:

具体的な話で言うとOJTといって、オンザジョブトレーニング、実際に仕事をする過程でないと学べないだろうというのが基本の考え方なんです。それだけだと普段の仕事とどれぐらい変わるのかという話もあるので、プラスで講義も組み合わせています。具体的にOJTと普� �やっているところは何が違うのかというと、同じ作品、同じタイトル、同じ話数をやる人が同じ所に集まっているというのが、今の現場ではなかったりするんです。

吉田:

昔はそうだったわけですよね。

桶田:

昔の方にお話を聞いたりすると、1つの現場に半年とか2年とかいて同じ作品を作り続けるんです。先輩も入れば後輩もいる。今は、原画を何カットかずつ割り振って、宅急便でやりとりをしたり、制作進行の人が車で回収したりとやっていて、個別バラバラで作業しているところが多い。同じアニメでも線の描き方から動きのお約束まであって、たとえば目パチはこういう風にするとかいろいろルールがあるんですが、みんながバラバラの作業をしていると、別作品を担当している人には聞きづらい� ��すよね。でも、同じ作品をやっていると聞きやすい。京都アニメーションさんやピーエーワークスさん、ユーフォーテーブルさんもそうですが、伸びてきているところは作画スタイルもみんな似ているんですよね。

吉田:

そういえば、今挙げられた会社はここのところヒットを飛ばしているところばっかりのような気がしますね。

岩上:

ホームグラウンドだから言うわけじゃありませんが、近藤さんは若手とかスタジオの育成を本気で考えています。

吉田:

マチ★アソビに至っては、アニメを越えて町のことを考えていますから。

桶田:

ここから先は仮説で、育成の重要性も作品に反映する部分があると思いますが、そこまで思いをいたして経営を考えるような方は経営がう� �いと思います。作品の選び方やプロモーションなど、そういうのが現れてくると思います。教える立場の作画監督から若手までが背中合わせとか一室で作っている、何時から何時まで一緒に居るとか。これもあまり守られていなくて、業界の方は同じところで作業していても時間がバラバラだったりするので。でもアニメミライでは他の仕事は掛け持ちしないでねということになっています。その代わり、掛け持ちできないと収入が下がるから単価を上げているんです。

吉田:

なるほど、技術が身につきつつ、その間の生活は破綻しないようにと。

桶田:

教える立場の人も時間を使うことになって、収入が下がってしまうことになるので、指導料をつけています。3ヶ月半ぐらいの期間になるので、その間に� �皮も二皮もむけるというのは現実的ではないかも知れませんが……

吉田:

中には、すでに指名で仕事をもらっている人もいるんですよね。

桶田:


これのおかげなのか、初めて指名で仕事が来たであるとか、作画監督を半パートだけだけれども受けたとか、そういう話があります。気付きの機会として、アニメーターの方はもちろん、制作会社の方に「こういう形も悪くないんだな」と思ってもらえれば。

吉田:

制作会社からすると使える若者が増えるって一番いいことじゃないですか。そのために大きく寄与するはずということですね。取り組みは結構面白くて、関係ある仕事だけではなくて必ず宿題が出ていて、写真集を丸1冊模写しろだとか、弁護士が厚生年金とはというのを教えたりするのもあるんですよね。

桶田:

そもそもアニメ制作はどのように成り立っているのかという講義をやったり、契約や 社会常識についての話をしたり、背景画とはどういうものかという話を小林七郎さんに来て話をしてもらったり、実際に演技指導を体験して芝居とは何かを実感したり。

吉田:

そのあたり、面白そうだから食いつこうと思ったらもう時間がなかった(笑) アニメミライが意義のあることだというのは分かってもらえましたでしょうか?

(会場拍手)

せっかくこうしたいい体制が作れても、できたものがつまらなければ意味はないと思うんですが、僕はアニメファンとしてこれまでの8本、いいものを見せてもらったなと思っています。ぬるぬる動くものでありつつ、文化庁くささがないわけですよ、いい意味で。業界への応援にも繋がるわけです。アニメファンとしてただ見ているだけだと還元できていないという感じがあるじゃないですか。DVD買ったりするときはたとえ「積ん読」になってしまってもお布施として買っておくという気持ちがあったりもしますよね。それよりも何よりも、これは劇場公開をしているわけだから、見に行くだけで直接作った人にとっての作りがいになる� �……お金じゃないですものねこの仕事は。

この中に、モテたくてアニメを見ている人はいないと思います。そこが他の趣味と違ってアニメのいいところだと思うんです。アニメは純粋に自分が楽しいから見ているだけですよね。だけど、それがこの先見られなくなったら寂しいじゃないですか。10年20年、ぼくらも楽しいものを見続けるために、単純に「見ればいい」んですよ。ここに集まっている人たちができることというと。

桶田:

この事業も国の中では小さなもので、誰も見なければ「あ、いらないんだ」とやめてしまう方向になってしまいます。でも、この取り組みがアニメ業界にとって意味があるのであれば続いて欲しいし、みなさんに支持してもらえるともっと大きく広げていこうという方向になりやすい� ��す。

吉田:

今でも及第点ですが、さらに社会現象になるレベルになると、文化庁はこれを続けなければならないということになるんだ。

桶田:

文化庁の担当者たちは、アニメーションの社会的認知をもっと高めて、ハイソにしたいわけではないけれど、後ろめたそうな感じをなくして当たり前のものとして認めて欲しいと考えているんです。

吉田:

ああ、文化庁のこれを担当している人たちって、「俺たち」なんだ。

桶田:

ほとんどそう言っていいと思います。

吉田:

そういう人たちが表のお仕事と繋げるべく頑張ってくれているんだから、俺たち地元が盛り上げないでどうするって話ですよね。地元に人たちにとってすれば他にも見るものがあって忙しいか� �しれない、アニメミライの公開時期だとストライクウィッチーズの劇場版だったかもしれないけれど、そっちを見た上でこちらも見ると、将来的に自分が得をするぞ、というわけですね。

メッセージとしては、そういうものだとわかって見てもらえると、みんなが得をする企画だということです。それが伝わっていればと思います。では、一言ずつ頂きたいと思います。

岩上:

アニメの表現という意味では、文化庁的なアニメと深夜アニメは二分されているわけではないと思います。たとえば放浪息子、四畳半神話大系、まどかのイヌカレー回、みんな連続していると思います。これからもいろいろなアニメを見て欲しいと思います。

佐藤:

今年も新しいプロジェクト「アニメミライ」が立ち上がって� �来年の今ぐらいには放送していると思います。プロジェクトもぜひお見知りおきいただいて、応援していただきたいと思います。アニマックス自体もまだまだ認知が足りないと思いますので、いまアニソングランプリという「アニソン歌ってプロデビュー」というイベントも行っていて、5月末日までに申し込んでいただけるとみなさんも歌手になれるかもしれませんので、引き続き、アニマックスもよろしくお願いします。

アニマックスのアニソングランプリは喜多修平さん、HIMEKAさん、佐咲紗花さん、河野マリナさん、鈴木このみさんを輩出しています。

桶田:

徳島にはufotable CINEMAオープニングに呼んでいただいて、5月にはマチ★アソビをやるからということで声をかけてもらいました。今はアニメミライ、まだ募集期間中なので、今年もちゃんと4本以上集まるのか、ちゃんとできるのか、集まったらまたいろいろな作業を繰り返すのかと思うと大変ですが、見てくれる皆さん、協力してくださる方々がおられる限りは頑張れるような気がしますので、引き続きみなさん、よろしくお願いします。

吉田:

弁護士なので普通に仕事をしている方が絶対に儲かるのにこの仕事をしている、アニメファン魂ですね。ご登壇いただいた3名の方に拍手をよろしくお願いします。マチ★アソビらしく、この3人も川べりとかふらふらしていると思いますので、見かけたらやさしくしてあげてください。アニメミラ イについてはすごく短くいえば「見てください」ということに尽きます、ぜひいろんな形でご覧頂きたいと思います。

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